仙丈岳・駒ケ岳(take編) 


日時:2005/12月31日〜2006年/1月3日
メンバー:ucon、s・alps、kana、take、hime、mikko

●1日目:北沢峠までのアプローチ
 丹沢山系以外の初めての冬山。登山口に行くまでに車中から見たピンクに染まる朝焼けの中央アルプスが、これからの山行への期待を盛り立てる。
 初日は、戸台までのアプローチ。さっそく共同装備のシャベル?、キャベツ???等をジャンケンで勝ち取る。普段自分が持ち歩かない物だけに妙な違和感を感じる。キャベツだ…。
 uconさんからお借りした冬靴は、頑丈で軽いうえさらに暖かかった。この靴と比べると、普段履いている3シーズン用の軽登山靴がかなりちゃちぃものに感じる。これから登る山と比べるとかなりのオーバースペック?とも思われるいい靴を、ただの河原歩きで靴底を削るのは気が引けた。下山後確認したが、少々削ってしまった。
 アプローチ時のザックの重量は正確には分からないが、およそ23〜24kg程度か。30kgにみたないしアプローチだけだから、まぁいいか、みたいなノリで歩き始めるが、歩き始めから早々に肩にメリ込む。登り始めてしばらくしてピッケルを杖がわりに使い始めるが、ストックみたいに使うと長さが足りず微妙に中途半端。久しぶりに山に入ったせいか、山の歩き方を忘れてバタバタと歩き、所々蹴躓きながらゆくうちに北沢峠に到着する。

●2日目:甲斐駒ヶ岳
 仙水峠まで行くとかなり明るくなっていた。ここから駒津峰までコースタイム1時間半の急登。登り始めるにつれて雲がとれ晴れてくる。冬山って結構暖かい?持ってきたのは350mlの魔法瓶一つだけ…。水を節約しながら登るが、なんだか足りそうもない。少々不安を感じつつも駒津峰まで順調に登る。
 駒津峰まで登ると、南アルプスの山々の上空には、笠雲やらつるし雲などのレンズ雲がいくつもちぎれ飛び、間の岳上空には『二重笠(笠雲が二重にできたもの。ごく希に三重、四重…となる。)』が形成され、これからの悪天を予想させる(ちなみに、富士山に笠雲とつるし雲が同時にできた場合の悪天率は85%を上回るそうだ。)。上空には高積雲、高層雲等の中間層の雲が入り混じりながら西から空を覆い始めていた。それらがじきに全天を覆い隠し、およそ半日後には降雪(降雨)になる…というのが通常なのだが、一度空を覆った雲はやがて残らず消失し、北アルプス等、日本の3,000m級の山々がすべて見渡せるくらいに晴れ渡った。山の天気はさっぱり分からん…。
 ここで『水なし事故』が起こる。どうやら水が足りないのは明らかで、足も出なくなってきた。このコースを考えれば、計画段階で水350mlで足りないことはちょっと考えれば分かるだろうと思うのだが、水はどのくらい必要か?ということよりも、冬山用の魔法瓶を新たに用意したことだけで安心して満足していたようだ。水を十分に摂らずに登っていたため、駒津峰から山頂までは水バテして隊列から結構離れてしまっていた。先頭のuconさんは、アイツは写真を撮って遅れている…、と信じて疑わなかったらしい。途中、kanaさんから「荷物重たそうだから持ちましょうか?」と、涙モノの申出を受けるが、こんなはた迷惑な個人装備(カメラとレンズと三脚)を断固負担させるわけにはいかず丁重にお断りする。
 少々バテ気味といえでも、そこに少ないながらも雪をまとった雪山があり、天気がよく光もある。靴を借り、寝袋も借り、アイゼンをも頂き、人の好意によってここまで来ることができた。自分にできることは少し腕に覚えがある『写真』で還元することくらいか、と勝手に解釈し、何とか自分にしか撮れないもの(ゲージュツ的?なヤツ)が1枚でも撮れればと、メンバーの山での勇士をデジカメに収める。しかし、動く人間はなかなか自分のイメージしたようには動いてくれず、写真的に絵になるのは連続する動作・表情の中のほんの一瞬である。隊列の順序の関係上、個々のメンバー全員を上手に撮るのはほとんど不可能だ(位置的に自分に近い人の方が撮りやすい)。ちょっと反則気味だが、kanaさんにポーズを指示する。「視線はこっち、足はあっち!」、叱咤激励?する中(kanaさんゴメンなさい。)、自分の予想だにしないアルピニズム?なポーズが飛び出し、kanaさんのなかなか楽しい写真が撮れた。笑い転げながら山頂に着いた頃には、魔法瓶の水は既に空っぽだった。
 前回無積雪期に甲斐駒ヶ岳に来たときは、直登ルートで意外に恐ろしい思いをした記憶があり、冬山はそれに輪をかけてヤバイのだろう、と覚悟してきたのだが、適度に降り積もった雪は適度な足場を形成して高度感を減殺し、足への衝撃をやわらげ、特別何らの恐怖も感じることもなく夏山よりもかえって歩きやすいくらいだった。
 下りはkanaさんから水をところどころ頂戴しながら下山する。kanaさんも水が足らずに困っている様子だったが、それでも水を分けてくれた。しかし、一度水を切らしたことによるバテはなかなか回復しなかった。天気も良く、下りもこれまた適度に暖かい。たまらずそこいらの雪を口に含むが、バテていたせいか口の中で水が作れずたまらず吐き出す。
 仙水峠からのなだらかな下山路の途中、ピッケルを一日使ってみた結果、ピッケルとは、なかなかよく機能的に作られた合理的なモノだなぁ、と思う。「滑り始めたら止まらないからムダ。」との意見もあるが、せっかく調達したピッケル。適当な斜面があれば滑落停止訓練たるものもやってみたいな、と思っていたところ、kanaさんから「この斜面はどうか?」との提案を受ける。一目見たところ、「滑っていった先は川にドボン!」、という流れ(オチ?)になっており、冬の小川は恐ろしく寒そうだったので丁重にお断りする。
 食事はmikkoさんが考え抜いて用意してくれており、3日間を通して味・量ともに十分すぎるほどだった。「味はどう?どう?」と聞くmikkoさんだが、味覚の精度を欠く自分の舌では、「美味しいよ…。」と、気の利かない返事しか返しようがない。普通下山後は、「何を食ってやろうか…、鶏(トリ)か、それとも豚(ブタ)か…。」と、まさしく餓鬼になっているのものだが、mikkoさんの食事が十分だったおかげで特別何が食べたいとも体は要求してこなかった。通常山行後に減少する体重も減ることもなかった。
 
●3日目:小仙丈ヶ岳
 昨日の好天はどこへやら?朝から降雪。樹林帯を抜け稜線に出るとマイナス4℃の横からの吹雪。いったいアルプスの冬の厳しさはどんなものなのだろう?岩に張り付いていても(張り付くほどのルートではないが)引っぺがされるほどの突風が襲うのか、それとも1m先を歩くメンバーが見えなくなるほどの猛吹雪なのか?はたして荒れた冬山にどの程度の装備で対応でき、その中でどの程度自分は行動できるのか?今回冬山に来たのは、冬山での限界?そこいらへんが本当に知りたかったからなのだ(一人で行けよっ!という話になるが…。)。ビチビチッと吹雪がオデコに当たる中、粛々と目出帽を被り、横風に大きく煽られて吹っ飛びながらも一人喜びはしゃいでいた。
 uconさんの判断で小仙丈ヶ岳で引き返すが、吹雪もじきにおさまった。猛吹雪を想定して用意した装備は、厚手のフリースにダウンの上下、厚手の手袋、ラッセル用の十分な行動食と体力を余していた。まだまだ吹雪を味わい足りなかった。まだまだ何か自分の奥底にある魂を解放するには至らなかった。下山中に覗く空の晴れ間が残念な気分にさせた。
 山行を通じてuconさんは、「メンバーの誰をバテさせないか、誰がバテそうか」等、メンバーの行動をよく見ているようだった。そして、タイムスケジューリングは正確で必ず日没前には山行は終了し就寝していた。撮影目的のために、夜明け前に登り日没後に稜線から下りてくる自分の気ままな天気まかせの撮影山行とは大きなギャップを感じたが、その細やかな配慮と時間管理そして合理的な状況判断には、リーダーとしての責任と苦悩、プロフェッショナルとして山をやってきた人間の自負を感じた次第だった。

●4日目:下山・帰宅
 朝からテントを畳んで撤収。テントを畳み終わり、次いで個人装備を整える。「あれっ?俺のテントポールが見あたらないぞ?」。なんとkanaさんが自分の「共同」をこっそりとザックに収納しようとしているではないか!?またまたぁ〜。共同の奪い合いをした後、早々に昼前に下山した。
 途中、高遠の城下町を通るが、この寒い厳しい冬の季節の後に咲き誇る、あの艶やかな高遠コヒガンザクラの姿を思い浮かべながらの帰路だった。

〔追加情報〕
・最低気温:−10℃
・最高気温:− 1℃

写真左:喜び溢れる甲斐駒ヶ岳頂上にて
写真中:魔利支天をバックに行く(巻き道ルートにて)
写真右:吹雪の中を行く(小仙丈ヶ岳直下にて)



     コメント一覧
[ 1 - 10 件 / 4 件中 ]

甲斐駒ヶ岳。
お二人ともコメント有り難うございます。
次は、夏の黒戸尾根から頑張って行ってみたいと思います。
その次は、黄蓮谷から…。
take  (2006/01/17 4:18:15) [コメント削除]

甲斐駒ヶ岳。
お二人ともコメント有り難うございます。
次はまず夏の黒戸尾根を行きたいと思います。
その次は、黄蓮谷から…。
take  (2006/01/17 4:15:56) [コメント削除]

黒戸尾根
積雪期の黒戸も楽しいよ!
そのうち行けるようになると良いですね。被写体として、また違った角度から甲斐駒を見ることができますよ。
雪烏  (2006/01/16 23:52:52) [コメント削除]

こんなに迫力あったっけ?
仙丈・駒ってこんなに凄かった? 写真も文章も? 流石!
ucon  (2006/01/16 23:45:00) [コメント削除]























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